等々力5丁目の住宅 設計趣旨

敷地は、以前にアパートが建っていた敷地を4分割して出来た旗竿地である。面積は100m2ほどだが、通路部分が約 14mと長いため、奥の建物が建つ敷地部分は8mX9mほどしかない。この場所は、現在は低層の住宅地だが、西から東へと緩やかに下る谷筋に位置するため、アプローチの方向から、北東側の段丘と南東側の緑豊かな九品仏の丘との間の谷へ向かって、地形による「空間の抜け」が存在する。

プログラムは、夫婦と子供2人の家族のための住宅である。それぞれの3つの個室を確保した上で、家族が集える豊かな共用空間を設けることが求められた。

厳しい斜線制限のかかる北側には、3個室と水回りをコンパクトに2層に配置し、高さに自由度が生まれる南側には、高さ1.5層分の共用空間を重層させる断面構成とした。平面的には、ボリュームを東西方向に少しずらして、北東側と南西側に隣地と 有効に連続するオープンスペースを創出した。
アプローチ部は、隣地の通路部分と合わせて幅4mの長い空地が生まれ、西側の谷筋への「空間の抜け」の方向と合致するので、この空間の流れを、建築を結び目(knot)として上部へと導き、東側の谷筋への「空間の抜け」や九品仏の緑への眺望と連続させた。アプローチから伸びる空間は、エントランスを経て、スパイラル状に上昇する階段となって上階へと誘う。各階諸室はスキップフロア状に接続され、2つの家族室は階段を含めて連続的な空間となって、空間の流れは、上部のテラスを経て谷筋へと伸びていく。