敷地は、府中本町駅から徒歩で数分のエリアにあり、大国魂神社に隣接している。この数十年の間に、周辺は戸建てや中高層の集合住宅へと開発が進んだ。道路幅員不足の問題もあって、この敷地はその流れから取り残され、結果として非常に良好な環境が残存する。
母屋の建て替えに際し、周辺住宅の未接道敷地の問題の解消のため、連担建築物設計制度を利用した敷地区画全体の計画を提案している。この制度では既存建物を計画に含むことができるので、通路を適切に配置した敷地内に、複数の建物を一体とみなして計画し、一定のルールのもとで、順次いくつかのフェイズで協調的に建て替えをおこなう。
塀を境界として隣接する神社の緑を視覚的に住戸内へ取り込むために、2階に2層吹き抜けのスペースが設られ、それに面してロフトが最上階にある。これらが寝室のある1階の上にのせられたLOTタイプ(loft on the top)を基本とし、そのバリエーションで各住宅は計画される。
フェイズ1のクライアントが建てるのは、若い夫婦とそれぞれの親が住む3世帯住宅。連担設計制度が適用できない場合には、43条ただし書きによる建替で2階建てに制限されるため、相互にレベルのずれた二層の構造体に、それぞれのパーソナルなスペースがインフィルとして挿入される構成とし、後に道路問題が解消した際にはスケルトンをいじらずインフィルで順法的に三層構成に改変して、子供部屋などの増設ができる設計となっている。